CB750 RC42というバイクは、ほんとうに、いいバイクなんです。日本の道によく馴染むというか、排気量も、サイズも、エンジンの力加減も、なにもかもが「ちょうどいい」。けれど、ぼくはまた、「1型隼(ハヤブサ)」を手に入れました。
2017年から、隼に乗っていました。しばらくしてCB750を買い足したとき、「もう、こっちで十分じゃないか」そんな気がして、隼を手放したんです。そのときは、それが「正しい選択」だと思っていました。でも、手放した瞬間に、胸のなかにぽっかりと穴が空いた。あわてて買い戻しに行きましたが、もう、あいつはオークションの向こう側。業者の手際のよさに感心しながら、ぼくは、猛烈に後悔しました。それから、隼を探しました。見つけたのは、2006年式の、赤と黒。走行距離は1万8000キロ。ほとんどいじられていない、純正の姿。沖縄の空の下で、ぼくはそいつに出会いました。ひさしぶりに見る隼は、やっぱりデカい。エンジンをかければ、あの懐かしい重低音が響く。
「そうそう、これだよ」
独り言をこぼしながら、跨ってみる。すこし前傾になるこの姿勢は、まるで、古くからの友だちと再会したときのようです。いちど手放して、また同じ型のバイクを買う。はたから見れば「愚かなこと」かもしれません。「なにやってんだか」と、自分でも苦笑いしてしまいます。けれど、ふたたび出会えたよろこびは、いちど失わなければ、気づけなかったものでした。これからは、もっと、ずっと、大事にしようと思う。
ぼくたちが生きていると、ときどき、軽はずみなことで大切なものを手放してしまうことがあります。でも、人生は、いつからだってやり直せる。いちど離れた道に、もういちど戻ったっていい。遠回りをした分だけ、愛車と走る沖縄の風は、前よりもずっと、心地よく感じるはずですから。