隼の前期と後期の違い

隼1型(前期)と2型(後期)の違い:外観、機能性、スペックを徹底比較

スズキの隼(GSX1300R)は、1999年の初登場以来、バイク界に君臨する伝説的な存在です。その象徴的な1型(1999-2007年)と2型(2008-2020年)は、外観や性能にさまざまな違いがあり、それぞれが持つ独自の魅力で多くのライダーを惹きつけています。本記事では、隼1型に乗っている僕が、隼1型と2型を徹底比較し、それぞれの特徴を詳しく解説します。

なお、便宜上、2007年以前の隼1型を「前期型(初代)」とし、2008年以降の隼2型を「後期型(二代目)」として解説します。

隼の外観の違い

まず、前期型と後期型の違いとして外観から解説します。隼の外観については、以下のように5つの違いがありました。

  1. ヘッドライトが違う
  2. サイドカウルが違う
  3. テールランプが違う
  4. メーターが違う
  5. サイレンサーが違う

1. ヘッドライトが違う

隼の前期と後期のフロントカウルのヘッドライトの違い

前期と後期の隼の違いが一目でわかるのがヘッドライトです。

前期型の隼のヘッドライトは、縦2灯式の涙滴型をしています。一方、後期型の隼のヘッドライトは、涙滴型を維持しつつ、ポジションランプが上に追加され、見た目は逆三角形に見えます。

前期型の隼はシャープなのに対し、後期型の隼は、大きく見える印象です。

2. サイドカウルが違う

隼の前期と後期のカウルの違い

隼のカウルは、流線型で空気の流れを滑らかにする設計がなされています。パッと見た感じ同じように見えますが、実は全く違うものです。

前期の隼のカウルはボルトどめで、そのボルトも外から確認できるのに対し、後期の隼にはボルトがなくフックでとめられています。それに、前期の隼はシャープですが、後期の隼は少し大きい設定です。

この違いはメンテナンス性にも影響します。つまり、前期型はカウルが取り外しやすいのに対し、後期型はカウルを外すのが少しだけ面倒で、ちょっとコツがいるようです。

3. テールランプが違う

隼の前期と後期のテールランプとウインカーの違い

隼のテールランプは前期と後期とではまったく違います。

前期型の隼は、シンプルで小ぶりなデザインをしたテールランプです。リアカウルの印象は全体的に軽やかでクラシックな雰囲気を醸し出します。一方、後期型の隼のテールランプは、現代的な視認性を持つデザインへと進化しています。リアカウルの形状も少し鋭角的になり、全体的によりアグレッシブな印象を与えます。

他にも、リアのウインカーも前期の隼は四角い形なのに対し、後期の隼は埋め込み式になっています。

4. メーターが違う

隼の前期と後期はメーターも違う

隼のメーターは、フルモデルチェンジで変わりました。

前期の隼はアナログなメーターで昭和チックな印象ですが、後期の隼は飛行機のメーターのようで近未来のような感じがします。中央に設けられたシフトチェンジも粋なものです。

後期の隼のメーター、かなりカッコいいですね。なんか戦闘機みたいだし、このメーターが好きな人も多いことでしょう。

5. サイレンサーが違う

隼の前期と後期のサイレンサーの違い

外観の違いの最後は、サイレンサーです。

前期の隼のサイレンサーは、銀色一色で丸い筒のような形をしています。一方、後期の隼のサイレンサーは三角錐のような形をしており、排ガス規制のせいかとても大きなりました。色は黒です。

画像を見てもわかると思いますが、前期の隼のサイレンサーはスマートですが、後期の隼のサイレンサーはかなりデカイですよね。見た目は、後期の隼の方がバランスが悪くて不恰好に見えます。なので、社外品のヨシムラマフラーなどに変更すればもっとカッコよくなるとおもいます。

前期の隼のサイレンサーは、個人的に純正でもいいと思いますが、ヨシムラのスリップオンマフラーにカスタムしてもカッコいいと思います。

エンジン性能の違い

では、2つ目の違いは隼のエンジン性能の違いです。

前期型の隼(1型)のエンジンは1298ccで、荒々しく力強いフィーリングが特徴です。ライダーに「原始的なパワー」を感じさせてくれます。一方、後期型の隼(2型)のエンジンは1340ccでトルクが強化され、より低回転域からの加速がスムーズです。

荒々しい走りは前期型の隼、滑らかでスムーズは走りは後期型の隼ということになります。

なお、馬力(最高出力)については前期の隼は「175PS」ですが、後期の隼は「197PS」です。後期の隼は、約22馬力もアップしました。

エンジンバルブの違い

他には「エンジンバルブ」の素材が違います。前期隼のエンジンバルブは「鉄製」なのに対し、後期隼のエンジンバルブは「チタン製」です。

鉄製のエンジンバルブ(前期隼)は重く、錆びやすいというデメリットがありますが、柔軟性があり長く保つことができるバルブです。ただ、前期型の隼はエンジンのレスポンスに多少のドンつき感があるのですが、その主な理由はCPUと、そして鉄製バルブだと言われています。

一方、チタン製のエンジンバルブ(後期隼)は、錆びにくく、軽くて強いというのが特徴です。しかし、高価というのが難点で販売価格が跳ね上がってしまうデメリットもります。ただ、チタンバルブはエンジンレスポンスが緩やかというか、滑らかな感じになるので、後期型の隼は前期の隼と比べて、クセがなくとても乗りやすいバイクとなりました。

少し、僕の見解をば!

さて、ここからは少しだけ僕の意見を述べます。

チタンバルブは良いようにみえますが、個人的には鉄製のエンジンバルブを支持します。理由は、チタン製のエンジンバルブは摩耗性展延性が悪いからです。そのため、ストレスがかかるとポキっと逝ってしまう恐れがあるんじゃないかと思います。それを考慮してか、チタン製エンジンバルブには特殊コーティング剤が施されているんですが、それも微妙な感じです。というのはコーティングされたチタン製バルブでも耐久性に少し疑問があるからです。

例えば、トヨタのアルテッツァにもチタン製のエンジンバルブが使用されているのですが、チューニングして馬力アップすると、すぐにエンジントラブルがおきるというのは有名な話です。中には実際にバルブが折れたという話もありますし・・・。

これはチタン製バルブが弱いというのが原因だと思うのです。なので、後期の隼に使用されているチタン製エンジンバルブは、個人的にあまり信用していないというのが本音のところです。

とはいえ、まあ、アルテッツァで使用されている時よりも、隼のチタン製バルブは進化していると思いますし(そうであってほしい)、それに隼のエンジンを酷使するような走りはここ日本ではできませんから、何ら心配する必要はないかもしれません。

ボディー剛性の違い

前期の隼と後期の隼のボディー剛性は明らかに違います。

基本的な構成は前期、後期ともに同じなのですが、エンジンの馬力アップに伴い、後期の隼はボディー剛性がアップしました。数値的に表すと後期型の隼のボディ剛性は15%もアップしています。

う〜ん、羨ましい。

前期の隼に流用できればいいのですが、たぶん無理でしょう(涙)。

機能性の違い

前期型(1型)と後期型(2型)の隼は、機能性が違います。

前期型 隼(1型)の機能性

前期型 隼(1型)は、シンプルな機能性が特徴です。1999年という時代背景から、電子制御技術はまだ発展途上であり、ライダーが「機械を操る」感覚を直接味わえる仕様となっています。

とくに、前期型 隼(1型)には基本的な電子制御装備がなく、ABSやトラクションコントロールは未搭載です。そのため、ライダーの腕が試される場面も多く、まさに「人馬一体」を味わえる設計となっています。

後期型 隼(2型)の機能性

後期型 隼(2型)では、前期型の特徴を受け継ぎつつ、現代の電子制御技術を取り入れて、より安全で快適な走行が可能になりました。

まず、「S-DMS」というドライブコントロールが採用されました。S-DMSとは、スズキ・ドライブモード・セレクターの略で、隼のエンジン特性を変更できる電子装置です。その機能は「A」「B」「C」の3段階に分けており、「A」はフルパワー、「B」はマイルド、「C」は雨の時のモードで急激なパワーが出ないようにコントロールできます。

また、後期型 隼(2型)には、2013年からABSが標準装備され、急制動時の安全性が向上しました。フロントブレーキキャリパーはブレンボラジアル4Pに変更されています。通称、「スズンボ」と呼ばれるものです。

パーツの豊富さの違い

さて、5つ目の違いは、前期の隼に比べて後期の隼はパーツが豊富ということです。これは純正だけに限らず社外品も同様です。

例えば、前期の隼は2007年で終了していますので、純正パーツが手に入らないものも幾分かあります。

一方、後期の隼はまだまだ現役のバイクです。なので、純正パーツは難なく手に入りますし、社外パーツも豊富に開発されています。

この違いはかなり大きいですよね。まあ、機能的な部品は前期の隼もあと10年くらい手に入れることができると思うし後期の隼との共通部品もあるので心配はいりませんが、しかし、前期隼のカウルなどは廃盤になっているものもあります。なので、今から中古を揃えて、ストックしておいた方が良いかもしれません。

総評

さて、これまでの内容を表一覧にして以下にまとめます。あわせて、他のスペックも比較できるように追加しました。

 前期の隼 後期の隼
外観・カウルが外しやすい
・マフラーがスマート
・メーターが昭和っぽい
・カウルが外しにくい
・マフラーがでかい
・メーターが戦闘機みたい
エンジン水冷直列4気筒1298cc水冷直列4気筒1340cc
最高出力175PS/9800rpm 197PS/9500rpm
最大トルク138Nm/7000rpm155Nm/7200rpm
ボディー剛性時速300kmに耐えられる前期型より15%アップ
車両重量約250kg約260kg
最高速度300km/h(リミッターなし時)299km/h(リミッターあり)
ABSなしあり
S-DMSなしあり
パーツ純正パーツに廃盤がいくつかある純正・社外パーツともに豊富

さて、どちらを選ぶべきか?

前期型 隼(1型)と後期型 隼(2型)のどちらが優れているかは、ライダーの好みや目的に大きく依存します。

例えば、前期型 隼(1型)がおすすめのライダーは、シンプルで荒々しいバイクの魅力を求める方や、自分の技量を試したい方におすすめです。その「古き良き」特性は、バイクの本質を楽しむのに最適です。

一方、後期型 隼(2型)がおすすめのライダーは、最新の技術と快適性を重視し、安全性も考慮したい方に最適です。特に長距離ツーリングや日常的な使用に向いていると言えるでしょう。

隼は、1型も2型もそれぞれ異なる魅力を持っています。それを理解し、自分のライディングスタイルに合ったモデルを選ぶことで、隼ライフを最大限楽しむことができます。とはいえ、「見た目が好き」という直感的に感じた隼があるのなら、それで選択してもいいと思います。

なお、隼はカラーリングのバリエーションも豊富でいろいろあります。隼のカラーの違いについて知りたい方は「隼の色を一覧にしてまとめてみた」に書いてあるので良かったらご一読ください。