前期GSX1300R隼(1型)のインプレ

1型の隼に初めて乗ったとき、「荒いな」と思った。洗練されていない。少し不器用で、正直。だが、走り続けるうちに分かってきたことがある。それは欠点じゃない。性格だと。

このバイクは、ライダーに歩み寄ってこない。こちらが歩み寄る必要がある。操作に気を配り、姿勢を整え、無駄なことをしない。

1型の隼には、余計な電装品がない。最新の制御もない。だからこそ、壊れにくい。不安定さを消す代わりに、バイクならではの感覚が残っている。構造が単純だから、トラブルも少ない。

隼の足回りの反応は、思った以上にいい。大きな車体なのに、入力に対して遅れがない。寝かせると素直に倒れ、起こすときも迷わない。扱いにくさより、分かりやすさが勝つ。

ただ、取り回しは重い。それは事実だ。押して歩くとき、その重さをはっきり感じる。だが、走り出すと話が変わる。

一度動き出せば、車体は安定し、重さは地面に溶ける。速度が乗るほど、
隼は落ち着いていく。風の中で、車体がひとつの塊になる感覚。走っているときのほうが、隼は軽い。この逆転が、1型隼の魅力だ。

1型の隼は速いバイク。だが、速さを誇示しない。アクセルを開けなくても、余裕がある。余裕があるから、開ける必要がない。だから、走りが静かになる。

1型隼には、最新のバイクのような便利さはない。だが、代わりに残っているものがある。判断する感覚。操作する実感。走っているという確かな手応え。それが、1型の隼にはある。

1型隼は、楽なバイクじゃない。だが、正直なバイクだ。そして、正直なものは、長く付き合える。

結論。

1型の隼は完成された答えじゃなく、一緒に育てていくバイクだ。

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